推薦書籍
No.48
『本屋で待つ』佐藤友則/島田潤一郎 夏葉社
BOOKSルーエ 高橋麻菜
本書を閉じた後、ふと「里山」について考える。それは森でも街でもないけれど、森のような街のような一面もある「あいだ」の場所。山と都市を繋ぎ、実に多様な生物が生息し、そこから去る者もあり、誰かの定住地にもなる。『本屋で待つ』の舞台であるウィー東城店は、そんな場所なのではないかと思う。
本屋に行けば何かヒントを得られるのでは、とそこを訪れる人達。そこに寄り添いながら信頼が生まれ、ゆっくり、すこしずつ、だんだん「よりよくなって」いく。足掻いている人達の変わらない所と変わっていく所。ちょっとだけ頑張れば進めるかもしれないし、ダメだったらまた考えればいい。
寄り添うこと、待つこと。それによって作られる居場所。
誰かの「途中の物語」は、まだこれからも続いていく。後押しされた彼らにこちらも後押しされ、本書を読み終えたときには、なんだかあたたかさと微笑みが浮かんできてしまうのです。