私のBunkamura文学賞

推薦書籍

No.32

『常識のない喫茶店』僕のマリ 柏書房

WARP HOLE BOOKS 上口鈴奈

『常識のない喫茶店』僕のマリ 柏書房

「働いている人が嫌な気持ちになる人はお客様ではない」

異色の喫茶店で繰り広げられる、店員とお客様との闘いを描いたお仕事エッセイ「常識のない喫茶店」。接客業の経験がある方なら、あるあると共感できるエピソードがたくさん詰まっています。

中でもお気に入りは「いかれたマスター」というエピソード。変わった登場人物ばかりの本書の中でも、一番変わっている?!魅力溢れるマスターのお話です。“「やさしさ」や「思いやり」なくしては仕事は成り立たない、楽しくやらなくちゃ意味がない”が、マスターの持論。クスッと笑えるだけでなく、社会の生きづらさや人間関係で心が疲弊しているときに、そっと寄り添ってくれる優しさも兼ね備えた、温かい作品です。

まるでフィクションのような魅惑の喫茶、不惑の喫茶である「常識のない喫茶店」へ来店してみてはいかかでしょう。

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