私のBunkamura文学賞

推薦書籍

No.31

『アウレリャーノがやってくる』高橋文樹 破滅派

PASSAGE by ALL REVIEWS スタッフK

『アウレリャーノがやってくる』高橋文樹 破滅派

『アウレリャーノがやってくる』はわたしたちをゼロ年代に引き戻す。東北から上京した純朴な美青年アマネヒトが志すのは、代理詩人。ダメ人間が集うオンラインの文芸サークル「破滅派」に加入し、詩作で身を立てようと奮闘する顛末を描く。下北沢の路上に詩やイラストを売ったり、シェアハウスで暮らす若者が増えてきた頃のことだ。

2007年の新潮新人賞受賞作品だが、不運にもこの小説が出版されることはなかった。著者の高橋文樹さんは、自ら出版社「破滅派」を設立、発表から14年を経て、2021年の年末に本作を出版した。当店PASSAGE(パサージュ)にも出棚いただいている(2022年5月現在)。

本が売れない、物書きが食っていけない。出版不況が叫ばれる一方で、ひとり出版社やインディーズの本屋は増え続けている。業界事ではなくて私事(わたくしごと)として、文芸や書籍にたずさわる人々は確実に増えている。

 一覧に戻る