私のBunkamura文学賞

推薦書籍

No.27

『ハムおじさん』大桃洋祐 徳間書店

ティール・グリーン in シード・ヴィレッジ 種村由美子

『ハムおじさん』大桃洋祐 徳間書店

 この秋に刊行された『ハムおじさん』、明るくおしゃれな表紙の丸々とした紳士を見ただけでなんだか楽しそうとワクワクしませんか!
 品が良く物静かな紳士のハムおじさんは、猫のミートボールと暮らしています。ある日、壊れた目覚まし時計を直しに坂の上の商店街にやってきました。時計屋で修理をしてもらう間、おじさんは他のお店でいっぱい買い物をしすぎて…ハムおじさんの日常がほのぼのとユーモラスに描かれています。

 絵本から飛び出してくるようなハムおじさんのコロコロした動きはアニメーション作家でもある大桃洋祐さんならでは。リズムがあって絵本そのものが動き出す感覚になります。自由で伸びやかな線と大桃さん独特の色使いは子どもだけでなく大人の心をも明るく開放させてくれます。

 デビュー作である前作『ぼくらのまちにおいでよ』(小学館)では人や動物が一緒に暮らす「街」を描いていました。「街を描くことは人を描くこと」と語る大桃さん。本作では暮らしを上手に楽しんでいるハムおじさんを描きます。丁寧な暮らしぶりが絵を通して伝わってきます。
 ハムおじさんとミートボール、そしてこの街のことをもっと知りたいと思わせるような魅力溢れる作品です。

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