私のBunkamura文学賞

推薦書籍

No.20

『太陽といっしょ』新宮晋 クレヨンハウス

クレヨンハウス 馬場里菜

『太陽といっしょ』新宮晋 クレヨンハウス

存分に外に出られなかった2020年。太陽をいっぱいに浴びたかった思いから大推薦の1冊。

2019年10月から2020年3月までフランス・シャンボール城で「新宮 晋 - 現代のユートピア」を開催。いまは兵庫県立有馬富士公園(三田市)でアートセンター「地球アトリエ」に取り組む、83歳の若々しく躍動感あふれる彫刻家の作品。

ページをめくるたびに感じるのは、絵本のそれぞれの頁に陽が差し込んでいる温かさと眩しさだ。風を感じながらこぐ自転車の軽快さ、そして友だちと「共走する」の中にあるワクワクや未知の明日への不安。遊びの中に、ふっと忍び込む青春前期の孤独。

暗くなるまで遊び切って向かう家路が、あたたかい灯りに迎えられる。子ども時代への懐かしさにはいつだって、太陽があった。

コロナ禍のせいで、友情や懐かしいひととのタッチにあこがれた2020年に贈る、絵本文学の傑作。

いつまでも少年のこころを忘れない作家のその姿勢の中にも、太陽が。

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