私のBunkamura文学賞

推薦書籍

No.17

『あめつちのうた』朝倉宏景 講談社

恭文堂書店 菅原 豪

『あめつちのうた』朝倉宏景 講談社

“きっとあなたも誰かの支えになっている!”

何事にも自信がなく消極的だった青年が、様々な人たちと出会い、ぶつかり合いながら成長していく物語。自分とは全く正反対の相手にも分かり合おうと努力して、相手の心の底を掘り返して耕そうとする姿に勇気をもらえます。今、内側に向いつつある世界の状況に対して、それじゃダメなんだ、相手を理解しようとしなければダメなんだ、どんな相手とだって分かり合えるんだ、という思いが伝わってきます。誰もが日々、一生懸命に生きています。きっと誰もが誰かの支えになっているんだ、という声も聞こえてきます。現在は非常事態で様々なことができない状況です。難しいかもしれませんが、この機会をなんとか前向きにとらえて自分の心の奥底を耕す時間になることを願ってやみません。グラウンドキーパーが冬に土を耕して1年間の野球の試合に耐えられるグラウンドを作るように、若い人たちにも自分の心を存分に耕して、収束後の飛躍に備えてもらいたいものです。

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