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スペシャル対談 シアターコクーン芸術監督 蜷川幸雄 ×オーチャードホール芸術監督 熊川哲也
バレエという芸術を表現したい
蜷川 熊川さんは日本でバレエのカンパニーを率いていますが、これは大変なことだと思う。演劇はもう少し歴史が長いし、日本語で通じる土壌がありますから。
熊川 確かにバレエはお客様の感性を刺激しないと成功しない。われわれ提供する側とお客様の受信力がマッチして、初めて相乗効果が生まれるんです。観て、刺激を受けて、心がえぐられるくらいの感動が起こらない人には響かないんじゃないかな。劇場の空気感や温度を変えるまでのものにするのは大変ですね。
蜷川 熊川さんは日本人には珍しく、正しい自己主張をしますよね。ヨーロッパに行った時から積極的だったんですか。
熊川 そうです。良くも悪くも主張ができたタイプで、野性的な勘と感性に従って生きていました。間違っていると分かっていても「正しい」と言い張るような、根拠のない自信に満ちてましたね。
蜷川 いい性格してるね(笑)。
熊川 でも僕も大人になりましたよ(笑)。ダンサーの世界はフィジカルな要素が圧倒的です。僕は今40歳手前で、表現方法の転換期に来ています。自分の身をバレエへのリスペクトに捧げなければいけないと自然に感じるようになって。長い歴史の中のほんの一部分だけれど、真っ直ぐなものをちゃんと表現していかなければならない。自分を表現するのではなく、バレエという古典芸術を表現しなければ、という気持ちなんです。
蜷川 それで今度は芸術監督をおやりになると。いい仲間が増えました。互いに闘争しながら、いい劇場がふたつ並ぶといいなと思いますね。
熊川 今、劇場の改装中なので、気付いたことは熱を持って言っていきたいと思っています。
蜷川 じゃんじゃん注文してケンカして、「もう辞めてやる!」くらいのことは何度も言ったほうがいいですよ。
熊川 勇気づけられます(笑)。渋谷という地には本当に魅力を感じますね。ロンドンのウエストエンドでもブロードウェイでも、オペラハウスの隣にキャバレーがあったり、ハイカルチャーとポップカルチャーが融合している。さまざまなものが豊かに発信されていて。渋谷もまさにそういう街だと思います。
蜷川 僕も渋谷、大好きですよ。渋谷の駅前からBunkamuraまで来るのもワクワクする。僕はネオンの洪水が好きなんです。電脳都市を通り抜けて「文化の村」に来るというのがいいですね。
重層的な価値を持つ劇場に
熊川 日本だとバレエの観客は9割が女性なんです。演劇はどうですか。
蜷川 僕は比較的男性客が多い方ですけれど、全体的には女性客が多いですね。外国は客席に大人が多いから重量感があるかな。日本ももっと夫婦やカップルで来てくれるといいなと。テーマ、作家、俳優、演出…と、重層的な価値を発見できる劇場でいたいと思っています。豊富なレパートリーが揃うといいなと。
熊川 ラインナップのチョイスは芸術監督としての義務ですからね。グランドバレエは年に一本新作を出すのがやっとです。それでも多い方です。1年前から構想を練り、美術や衣裳の打ち合わせ、振付、リハーサル…。どうしても時間がかかる。今度の『シンデレラ』ではようやく演出だけに専念できます。自分のカンパニーを始めたこの10年で初めてです。
蜷川 それは大変ですね。オーチャードホールの改装一作目ですから責任重大ですよ。でも、面白いじゃないですか。
熊川 ハハハハ!いいですね、そういうプレッシャー。
蜷川 満員になるといいですね。どんどんメディアにも出て、吹きまくってください。あとで恐怖に震えながら、一生懸命やる(笑)。ささやかな友情として贈る言葉です。ぜひ頑張ってください。
熊川 ありがとうございます。一度コクーンに遊びに行ってもいいですか。
蜷川 ぜひ。僕も『シンデレラ』に駆けつけますよ。
文:市川安紀
写真:渞忠之
オンワードPRESENTS
熊川哲也Bunkamuraオーチャードホール芸術監督就任記念
Kバレエ カンパニー「シンデレラ」
日程:2012年2月2日(木)~2月10日(金)
シアターコクーン リニューアル・オープン公演
下谷万年町物語
日程:2012年1月6日(金)~2月12日(日)























