2024.11.20 UP
【展覧会情報】
渋谷区立松濤美術館「須田悦弘」展
渋谷区松濤にある渋谷区立松濤美術館。11月30日(土)より開催される展覧会をご紹介いたします。
■「須田悦弘」展
普段、道端で見かけるような草花や雑草。実は本物と見紛うほどに精巧に彫られた木彫作品です。須田悦弘(1969~)は独学で木彫の技術を磨き、朴の木で様々な植物の彫刻を制作してきました。須田によって生み出される植物は全て実物大で、それらを思いがけない場所にさりげなく設置することで空間と作品が一体となり、独自の世界をつくりあげています。
本展は、東京都内の美術館では25年ぶりとなる須田悦弘の個展です。今回、須田の初期作品やドローイング、近年取り組んでいる古美術品の欠損部分を木彫で補う補作の作品等をご覧いただくとともに、本展のための新作も公開します。
渋谷区立松濤美術館の建築は、「哲学の建築家」とも評される白井晟一(1905~1983)によるものです。閑静な住宅街に位置する石造りのユニークな外壁、入口の先には楕円形の吹き抜けがあり、そこに架かるブリッジからは池と噴水を見下ろすことができます。地下2階から2階まで螺旋階段で繋がり、高い天井と湾曲した壁面をもつ展示室や、ベルベットの壁布が張られ、絨毯敷きにゆったりとしたソファが置かれた展示室など、他にはない空間が来館者を迎えます。
ここに須田の植物を配することでどのような作品となるのか。白井建築を舞台にした須田悦弘のインスタレーション作品としてもご期待ください。
渋谷区立松濤美術館 外観 撮影:上野則宏
■展覧会のみどころ
貴重な初期作品を多数出品
●多摩美術大学のグラフィックデザイン科で学んでいた須田氏ですが、授業でスルメを彫ったことをきっかけに、独学で木彫を始めました。本展では、その時の《スルメ》と、須田氏が初めて彫った植物《チューリップ》をご覧いただきます。
また今回、大学の卒業制作を再現して展示します。本作を公開するのは卒業後初めてのこと。当時、卒業制作展でしか見られなかった作品をお見逃しなく。このほか、学生時代に制作した小さな木彫や絵画作品も出品予定です。
須田悦弘《スルメ》1988年 木に彩色 作家蔵 ©Suda Yoshihiro / Courtesy of Gallery Koyanagi
須田悦弘《チューリップ》1989年頃 木に彩色 作家蔵 ©Suda Yoshihiro / Courtesy of Gallery Koyanagi
●須田氏の最初の個展は1993年の「銀座雑草論」。銀座のパーキングメーターに停めた自作のリヤカーが展示空間でした。外側はトタンで、内側には全面に金箔を施し、1本のチチコグサモドキを展示したもので、この斬新な手法は注目を集めました。
【参考画像】「東京インスタレイシヨン」1994年当時の様子
本展出品作《東京インスタレイシヨン》は2回目の個展で発表されたもの。この時は銀座の駐車場を借りて展示されました。ドアから入る細長い部屋は、その奥にある朴の葉と実に静かに向き合うことのできる空間となっています。
須田悦弘《東京インスタレイシヨン》(部分)1994年 ミクストメディア 山梨県立美術館寄託
©Suda Yoshihiro / Courtesy of Gallery Koyanagi
●練馬区立美術館、東京都現代美術館、横浜美術館が所蔵する須田氏の作品は、現代美術の代表的なコレクターである、賛美小舎 上田國昭氏、上田克子氏ご夫妻が各館に寄贈した作品です。
横浜美術館のドローイングは、須田氏が夫妻の希望を受け、夫妻が所蔵していた作品を描いたもの。普段、制作の際にはドローイングや下絵は描かず、実物や写真を見て直に彫り出していく須田氏ですが、ドローイングも驚くべき巧みさです。
須田悦弘《ガーベラ》1997年 木に彩色 東京都現代美術館蔵 賛美小舎 上田國昭氏・上田克子氏寄贈 撮影:田中俊司
©Suda Yoshihiro / Courtesy of Gallery Koyanagi
須田悦弘《ガーベラ》1997年 水彩、鉛筆・紙 横浜美術館蔵 賛美小舎 上田國昭氏・上田克子氏寄贈
©Suda Yoshihiro / Courtesy of Gallery Koyanagi
白井晟一建築や古美術とのコラボレーション
●「補作」とは、古美術の欠損部を補うこと、もしくは補った作品のことを言います。2023年の須田氏の個展は、現代美術作家・杉本博司氏が展覧会名を「補作と模作の模索」と名付け、これまでは“知る人ぞ知る”ものだった須田氏の補作作品を中心に開催されました。
須田氏の最初の補作作品は、杉本氏に依頼されて補った鎌倉時代の神鹿像です。実際に手に取り、観察し、研究した上で補われた作品は、一見、どこを補作したのかわからないものもあり、須田氏の驚異的な観察力とわざを堪能することができます。
《春日若宮神鹿像》鎌倉時代(13~14世紀)、木彫 ※須田悦弘 補作:角・榊・鞍(平成時代)、瑞雲(令和時代)
《五髷文殊菩薩掛仏》鎌倉時代、板絵著色
公益財団法人小田原文化財団蔵 Photo: Hiroshi Sugimoto
●渋谷区立松濤美術館の建築は、「哲学の建築家」などとも評され、独自の世界を建築に表す白井晟一によるものです。曲線を多用したユニークな建物に、須田氏はどのように植物を配するのでしょうか。本展のために何度も美術館に足を運び、展示する場所を決め、その場所のための新作も準備中です。
須田作品は、展示される空間も含めて作品です。作品を探すことも楽しみの一つで、ひっそりと置かれた植物を発見した時には、まわりの景色がそれまでと違って感じられるかもしれません。ぜひご来館いただき、須田氏の生み出す空間をお楽しみください。
渋谷区立松濤美術館 階段 撮影:上野則宏
◆会期中イベント
●公開制作
本展出品作家である須田悦弘氏の制作の様子をご覧いただきます。
日時:2024年12月15日(日)
午前10時30分~午後5時30分(適宜休憩あり)
場所:地下1階展示室(予定)
*無料(要入館料)
*事前申込は不要ですが、混雑状況により、場所の変更、整理券の配布、観覧時間の制限等をさせていただく場合があります。その場合はイベント前日までに渋谷区立松濤美術館ホームページ及びSNSでお知らせします。
●アーティストトーク
本展出品作家である須田悦弘氏に制作について語っていただきます。
日時:2025年1月11日(土)午後2時~(約1時間)
聞き手:渋谷区立松濤美術館 学芸員
場所:地下2階ホール
*無料(要入館料)
*定員70名(要事前申込、応募者多数の場合は抽選)
*申込締切 12月17日(火)
※申込方法は渋谷区立松濤美術館ホームページをご参照ください。
●館内建築ツアー
白井晟一設計の美術館建築を職員がご案内します。
日時:会期中の各金曜日 各日午後6時~(約40分)
*無料(要入館料)*各回定員20名 *事前申込不要
開催期間:2024年11月30日(土)~ 2025年2月2日(日)
開館時間:午前10時~午後6時 (毎週金曜日は午後8時まで) *入館は閉館時間の30分前まで
休館日:月曜日(1月13日は開館)、12月29日(日)~1月3日(金)、1月14日(火)
会場:渋谷区立松濤美術館
京王井の頭線 神泉駅 下車徒歩5分
JR・東京メトロ・東急電鉄 渋谷駅 下車徒歩15分
〒150-0046 東京都渋谷区松濤2-14-14
TEL: 03-3465-9421
https://shoto-museum.jp
※MY Bunkamuraでの本展覧会チケットのお取り扱いはございません
チケットの詳細は渋谷区立松濤美術館ホームページをご覧ください
*外部サイトにリンクします
主催:渋谷区立松濤美術館 協力:ギャラリー小柳