N響オーチャード定期

2016-2017 SERIES

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マルティン・ジークハルト

7月のN響オーチャード定期を指揮するマルティン・ジークハルトさんにメールでインタビューをしました。

©Robert_Maybach

マエストロは、2014年のN響と共演されましたが、どのような印象を持たれましたか?
「前回は、ピアノのユリアンナ・アヴデーエワとモーツァルトのピアノ協奏曲第21番で共演し、ブルックナーの交響曲第4番を指揮しました。N響はウィーンのオーケストラと同じように素晴らしいサウンドと華麗なテクニックを持ち、リハーサルでの演奏の水準も高く、心からリラックスして指揮をすることができました」
マエストロはチェリスト出身ですね。エルガーのチェロ協奏曲に関しては、どのような想い出がありますか? この曲のどこが魅力的だと思われますか?
「エルガーのチェロ協奏曲は、この作品の大家とも言うべきポール・トルトゥリエに教えを受け、彼から全身全霊でこの曲を演奏することを学びました。理知的なだけではなく、私たちの心に訴えかけてくるのが、エルガーのチェロ協奏曲なのです。できるかぎりの温かな音色で演奏するべきです。後期ロマン派におけるもっとも美しい協奏曲のひとつと言えるでしょう」
エルガーのチェロ協奏曲で独奏を務めるクレメンス・ハーゲンさんとはこれまでにも何度も共演されていると聞きました。ハーゲンさんにはどのような印象をお持ちですか?
「クレメンスは親しい友人であり、知り合ってからもう30年以上になります。音楽家として、ソリストとして素晴らしいだけでなく、室内楽においても非常に優れたチェリストなので、彼との共演はいつも楽しみです。それに、人柄も素敵なのです!」
ブラームスの交響曲第1番は、最も人気の高い交響曲の一つです。マエストロはこの作品のどこに最も魅力を感じますか? 
「ブラームスが交響曲の作曲を始めたのは、かなり後になってからです。第1番の交響曲について語るためには、他の交響曲についても触れなければなりません。そして、すべての作品が異なる様相を呈しているので、それらを理解するためには、それぞれの作品の持つ世界の中に深く飛び込んでいかなければなりません。そうしてこそ、ブラームスの作曲の発達が理解できるようになるのです。

交響曲第1番は、それぞれの楽章に様々な陰影があり、色彩感溢れる豊穣な作品と言えるでしょう。ドラマティックに始まり、リリカルになり、第3楽章ではセンチメンタルになります。そして、このうえなく素晴らしい第4楽章でフィナーレを迎えます。世界中の指揮者が愛し慈しむ、やりがいのある作品なのです」
今回のN響との共演では何を期待されていますか?
「素晴らしい技巧とオープンな心を持つ世界的なオーケストラであるN響と、好奇心をもって、一緒にブラームスの音楽を創り上げたいと思います」
マエストロは何度も日本に来てられますが、どこがお好きですか?
「どこが好きかと言うのが難しいくらい日本が大好きで、毎回の滞在が大きな喜びなのです!」
最後にメッセージをいただけますか?
「ぜひコンサートにいらしていただき、聴こえてくる音楽に耳を傾け、心を開いてください。エルガーとブラームスの2時間をお楽しみいただければ幸いです!」

インタビュー:山田治生(音楽評論家)