今回の楽員インタビューは、2017年2月入団、首席トランペット奏者として活躍する長谷川智之(はせがわ ともゆき)さん。
先ずは、トランペットとの出会いから伺いました。

「小学校2年生の誕生日に、親がコンサートのチケットをプレゼントしてくれました。小学生ですから玩具でなくてがっかりしましたが、それが伝説のトランぺッター、ニニ・ロッソのコンサートでした。もう、格好良くて、衝撃でした。すぐに楽器を買ってもらって、本来なら4年生からしか入れない学校の金管バンドに3年生から入れてもらいました。朝から晩まで休みの日も毎日練習して、コンクールは北海道大会まで進みました。」

函館のご出身でしたね。中学も高校も吹奏楽ですか。

「そうです。吹奏楽が盛んな地域で、周りは経験者ばかりでした。中学生の頃には、プロの演奏家になろうと意識していたと思います。高校1年の終わりから杉木峯夫先生について、音の出し方の基本を習いました。シンプルな音でより質を高める、一発の音を突き詰める自然な奏法を、自分で考えることを教わりました。高校2年で部活は引退して、大学受験に備えました。」

東京藝術大学に進まれます。

「初めて東京に出てきたときは、あまりの環境の変化に本当に刺激的でした。大学4年で、(元N響首席奏者の)関山幸弘先生にレッスンしていただきました。ここでは練習した曲を見ていただきました。先生の全盛期でしたから、豊富な経験に基づいた、より実践的なアドバイスを沢山いただきました。オーケストラで演奏する上でのスタミナ配分といったことまで。」

その関山先生の後任として、N響に入団されます。

「N響は、先ず弦楽器がしっかり揃っていて、まるで音が見えるようです。木管楽器はスーパースターばかりで、表現力が豊かです。勿論、金管楽器も名手揃いですので、その中で演奏するのは非常に緊張しますが、同時に、ここに行けば良いという方向性が明確でとても吹きやすいのです。精度が高いので曖昧なことは許されません。」

オーケストラの中で、トランペットの役割とは。

「やはり花形ですね。作曲家はこの楽器が一番目立つように作曲してくれていますから、ここぞという時はみんなの矢面に立って引っ張っていくことでしょうか。ただ華やかなだけでなく、木管楽器とも溶け合う、金管楽器の中でも一緒にハーモニーを奏でることも大切です。そのためには音の大小ばかりでなく、音色のイメージを沢山の種類持たなくてはなりません。“息”が仕事をしているので、息づかいのバリエーションが必要です。」

今回のプログラムは、何と言っても「展覧会の絵」ですね。

「そうですね。冒頭のソロは緊張しますが、まだ誰も音を出していないところに、自分のイメージしたものがそのまま出せれば良いので、集中はしやすいです。開幕を任された先発ピッチャーみたいなものですね。
 ラヴェルは、色彩豊かなオーケストレーションの魔術師とも呼ばれていますね。『サミュエル・ゴールデンベルクとシュミイレ』という曲は、お金持ちを弦楽器が、貧乏な人をピッコロ・トランペットにミュートを付けて表現します。もとはムソルグスキー作曲のピアノ曲を、こうした楽器の使い方にアレンジするなんて、流石だなと感心します。そして最後の『キエフの大きな門』は、オーケストラ全員が演奏する中でトランペットが活躍します。本当に吹いていて幸せな曲です。」

オーチャードホールの印象は。

「吹きやすいホールですね。何回も演奏していますが、響いている感じが自分に返ってくる。そういうところが演奏する方には助けになるんですよ。気持ちよく演奏できます。」

ありがとうございました。