今回の楽員インタビューは、2009年に入団、現在、第1ヴァイオリン次席代行を務める若きホープ、山岸努(やまぎし つとむ)さん。オーケストラで弾くことが、ますます楽しくなってきたと言います。

前回(第87回)に続き、2回連続のロビーコンサートご登場ですね。

「これまでも地方公演の際には何度かロビーで演奏したこともあるのですが、東京では、前回のオーチャードが初めてでした。お客様の雰囲気がとても暖かくて、リラックスして弾くことが出来ました。舞台で弾くよりもお客様がずっと近くて良いですね。
今回は、オール・ドヴォルザーク・プログラムなので、もう『アメリカ』しかないなと。
メンバーも2、30代のフレッシュな仲間を集めましたので、ご期待ください。」

室内楽も活発にされていますね。

「固定メンバーでの活動ではないのですが、室内楽は大好きです。室内楽を大きくしたのが、オーケストラですから。(室内楽は)人数が少ない分、意思の疎通も図れます。和音の響きが共有できて楽しいですよ。コンサートマスターのマロさん(篠崎史紀さん)とは弦楽四重奏などでご一緒して、沢山教えていただきました。マロさんのコンサートでは、その軽妙なおしゃべりも好評ですが、必ず若手に“無茶ぶり”されるので、演奏は勿論ですが、時に、演奏よりも話す内容について徹底的に予習したものです。(笑)」

子どもの頃は、“やんちゃ”だったそうですね。

「いつも走り回っている様な落ち着きのない子どもでした。5歳頃、母親に連れられて幾つか音楽教室をまわったのですが、“悪がき”を受け入れてくれたのは、桐朋学園子供のための音楽教室だけでした。最初は、合唱コンクールでピアノが弾けたらいいな、というイメージでしたが、「棒を振り回す方が楽しそう」ということで、ヴァイオリンに決めました。棒というのは、今思えば弓のことですね。そこで、一番若い先生にレッスンをお願いしました。(笑)」

大学に入る前に怪我をしたそうですね。

「高校3年生の時に、楽器の弾き過ぎで腱鞘炎になってしまい、1年くらいヴァイオリンを弾くことが出来なくなりました。楽器がすっかり嫌いになって、もうひたすら遊びほうけていました。それでも、家族や友人の支えがあって怪我を克服し、何とか復帰することが出来ました。」

N響に入って、7年間が経ちました。

「もう、7年あっという間でした。3年くらい前から、ようやくオーケストラに慣れてきて、とても弾きやすくなりました。何回も演奏している曲でも、今まで聴こえなかったところが聴こえるようになったり、幅が広がるというか、自分の音楽が出来る様になってきました。最近は、次席代行として、前方で弾く機会も増えたので、コンサートマスターや他の首席奏者の弓使いもよく見え、呼吸も合わせやすくなりました。ますます、オーケストラが楽しくなってきました。」

最近、印象に残ったコンサートは。

「昨年10月、NHK音楽祭で、首席指揮者のパーヴォ・ヤルヴィさんと演奏した「幻想交響曲」(ベルリオーズ作曲)が良かったですね。いつもよりはるかに大きな音量も出て、流れも良い、みんな気持ちよさそうに弾いていました。 指揮者は、やはり、オーラ。見た目は大切ですね。勿論、耳が良くなくてはいけません。デュトワさんはフランスものを振らせたら抜群ですし、ブロムシュテットさん、ジンマンさん、エリシュカさんといった指揮者は、練習の初日から緊張感があって大好きです。」

新婚さんだそうですね。

「昨年12月に結婚したばかりです。もう、新婚生活でいっぱいいっぱいですよ。妻はプロの音楽家ではありませんが、アマチュア・オーケストラでヴィオラを弾いていて、とても耳が良いのです。たまに、演奏会を聴きに来てくれると、なかなか辛口な批評や、なるほどと思うような意外なコメントを聞かせてくれて、新しい発見になります。」

ありがとうございました。どうかお幸せに。