今回の楽員インタビューは、長年、N響の顔の一人として活躍された横川晴児さんの後任として、クラリネットの首席という重責を担う伊藤圭(いとう けい)さん。2011年5月に入団されて4年間、オーケストラの中での存在がますます大きくなってきました。

クラリネットとの出会いは。

「クラリネットの前に、中学校の吹奏楽部で、トロンボーンを吹いていました。スライドが格好良く見えたのです。そんな中学時代に『東京クラリネット・アンサンブル』のCDを聴きまして、クラリネットもいいな!と思いました。そこで、高校の吹奏楽部では、クラリネットに転向したのです。」

高校時代は、どのような音楽生活でしたか。

「高校2年生からは、地元のオーケストラ、仙台フィルの先生についてレッスンに通いました。先生に薦められて聴いた、ブラームスのクラリネット五重奏曲は、当時よく聴いていたミスチルやドリカムと同じように、何かクラシック音楽ではないみたいに、こんなに旋律が気持ち良い音楽があるんだ!と心に響きました。」

その頃には、もう音楽をお仕事にしようと決められていたのですか。

「音楽専門ではなく、普通高校に通っていたのですが、県内のソロ・コンテストで金賞と特別賞をいただき、音大に進もうと思うようになりました。先輩の中にも、何人か、音大に進学された方々もいましたので、可能性があるのではと。」

その当時の、憧れの人は。

「やはり、横川晴児さんです。『N響アワー』を見て、濃厚で、重厚で、ずっしりとした横川さんの音を聴いて、あの音が出したい!と思っていました。ですから、N響に入団する前に、横川さんと並んで演奏させていただいた時には、もう緊張しました。」

N響に入団して4年間が経ちました。

「最初の頃は、テレビ放送のカメラを意識したこともありましたが、・・・今は、指揮者の要求にこたえることに集中するのみです。他のことには、気が回りませんね。まだまだ、マエストロの求めるものが消化できないことも、しばしばです。それでも、歳を重ね、人生を重ねていくなかで、どういう演奏が出来る様になっていくのか、楽しみです。」

オーチャードホールの印象は。

「客席で聴くと、座席によって聴こえ方が違うのが楽しいですね。私は、特に、2階や3階の上の方が、良く響いて好きです。舞台では、バランスの取り方が難しいこともありますが、弦楽器がたっぷり響くので、遠慮なく吹けるのです。結構、吹いてますよ。」

今回の演奏曲目の聴きどころ、伊藤さんの“吹きどころ”は。

「『ガランタ舞曲』(コダーイ作曲)ですね。何と言っても、クラリネットのソロがありますからね。コダーイは、ハンガリーの作曲家ですが、日本人の私たちにも、気持ちが分かると言いましょうか、まあ、乗りやすいですね。この曲は、2013年3月に、ディエゴ・マテウスの指揮で、東京と九州ツアーで演奏した覚えがあります。」