ウィーン国立バレエ団 2018年来日公演

Interview
ザハール・ブロン&服部百音 インタビュー

©H.Iwakiri

本公演は名教師ブロンの70歳記念。彼はこう振り返る。

ブロン:「私は幸福な人生を送ってきました。教えるという才能は、神様からの贈り物です。本物の才能を個性を壊さずに開花させるために必要なのは、“妥協のないプロフェッショナリズム”。それに私たちの世界に限界はありません」

出演者の一人、服部百音は8歳から師事している。

服部:「本当に優しく細かく分かりやすく、自ら弾いて教えてくださるので、沢山吸収してきました。芸術に終わりはない、常に曲のもつ最大限の魅力を伝えるといった生き方は、門下生全員が大切にしていると思います」

門下生=今回の顔ぶれは、ブロンも「ミラクル!」と言う。

ブロン:「レーピンは素晴らしい名手。それに“いい人”です。奏者は裸同然で魂をさらけ出しますから、これは大切なこと。大進は、個性が煌めいていて、自らの仕事に対する熱心さには頭が下がります。百音が示すアイディアは私にとっても新鮮。自分の考えを楽器に乗せて伝えるその手法にいつも驚かされます。パロマ・ソーは、非常に才能があり、音楽そのものの深みを伝えんとする演奏家。70歳、45歳、30代、18歳、12歳の確固たる個性の持ち主が揃っていますから、色々な局面のある面白いコンサートになりますよ」

 ブロン曰く、プログラムのコンセプトは「ヴァイオリンの多彩な魅力を紹介すること」。

ブロン:「私が弾く『ツィガーヌ』は様々な性格描写を、レーピンが選んだ『序奏とロンド・カプリチオーソ』は短時間にヴァイオリン弾きとしての魅力を伝えられる曲。百音が弾く『ファウスト・ファンタジー』は、彼女の音楽性とヴィルトゥオージティが発揮できると考えて、私が選びました」

服部の期待も大きい。

服部:「各世代の門下生が、元気な先生と同じ場所に集結できるのは奇跡のよう。『ファウスト~』は10年位弾いていますが、毎回違う発見があるので、いま可能な最高の演奏をしたいですね」

他に各奏者が共演する曲もあるので、まさに見逃せない機会となる。

音楽評論家:柴田克彦