キャスト変更のお知らせ
Spring 2018『白鳥の湖』公演に出演を予定しておりました中村祥子は、左大腿方形筋挫傷の為、下記の通り、キャストを変更させて頂きます。
Spring 2018『白鳥の湖』
●3月22日(木)14:00公演
●3月24日(土)17:00公演
〈オデット/オディール役〉
中村祥子→小林美奈
何卒ご了承のほど、お願い申し上げます。
主催者/K-BALLET COMPANY
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なお、本件に伴うチケットの払い戻し、変更は承りかねます。
何卒ご了承下さいますようお願い申し上げます。
■お問合せ:チケットスペース 03-3234-9999
©Hidemi Seto
熊川哲也が手掛けた完全オリジナルの新作『クレオパトラ』が今秋、鮮烈な世界初演を果たし、バレエ団としてさらなる境地を拓いた今だからこそ見るべき舞台──それが『白鳥の湖』。〈バレエの代名詞〉たる本作の魅力を描き切り、また現代を生きる古典の新たな可能性をも提示した一大傑作として絶対的評価を誇るこの熊川版は、2003年の誕生以来、カンパニーの躍進と発展を象徴する代表レパートリーとしてその名を轟かせ、今なお進化を遂げ続けている。熊川の美意識に貫かれた舞台空間がもたらす限りない神秘、ダイナミズムに富んだストーリー展開、そして物語と密接な融合を果たした舞踏の圧倒的な美──この名作こそは、まさに熊川バレエの原点であり、ダンサーの“いま”を映し出す鏡。
浅川紫織×宮尾俊太郎、中村祥子×遅沢祐介という成熟を極めるプリンシバルたちと、飛躍著しい新鋭・矢内千夏×栗山廉という豪華3カップルの競演で贈る、新たなる感動の世界を見逃すな!
――世界のフィギュア・スケーターたちを魅了してやまない“白鳥”の世界をダンサーと共に
映画『陰陽師』における音楽“SEIMEI”のように、羽生結弦選手以外のスケーターには到底すべれないスケートの演目がある。ところがその真逆というか、フィギュア・スケートの季節になると必ず使われるのが『白鳥の湖』。それも1人や2人じゃなく、複数の選手たちがこの名曲に乗って自分なりの世界観を表現しようとするのだ。今シーズンで言えば、天才少女ザギトワしかり、ソツコワまたしかりで。かつてはあの浅田真央選手もすべっていたほど。こんなことをフィギュア・スケート好き仲間としゃべっていて、「なんでこれほどまでに『白鳥の湖』に集中してしまうんだろうね?」と言ったら、「みんな、踊りたいのよ。白鳥になって。」もう、目からウロコだった!日本舞踊を習い始めた女の子が『藤娘』を踊りたいように、いやそれ以上の狂おしさを持って、人は、“白鳥”を踊りたがる。ロットバルトの企みによって白鳥の姿に帰られたオデットたちは、もちろん人間の若い娘で、それゆえに白鳥としての優美な姿の中に、人間ならではの心の葛藤や恋の喜びなどが表れているが、これが単なる形態模写だとしたら「白鳥に似てるね」「きれいだね」だけで終わっていたはず。ところが、チャイコフスキーの音楽でひとたび命を吹き込まれると、そこにいるのは人間と白鳥のあわいがハッキリしないスペシャルな存在。胸を反らして宙を翔べばそのまま飛び去ってしまいそうだし、自分の羽根に頬をうずめれば、しばし苦しみを忘れて安楽の時を迎えて。第2幕を“情景”とは言い得て妙で、白鳥百景とでも形容したくなるいろんな姿を見せてくれるのである。
「白鳥を踊りたい」と言っても、そこは案外ハードルが高くて、自分ひとりで羽をバタバタしていてもつまらない。全員揃うと一糸乱れぬ美しい集団として湖や森と共にオデットを盛り立ててくれる女性ダンサーたちが、よく見ると各々に個性的で物語に厚味を持たせる。その輝かしいキャリアの中で『白鳥の湖』という名作を知り尽くした熊川哲也だからこそ、作り得た総合芸術としてのバレエが、新しい扉を開いている。例えば、白鳥たちのチュチュの微妙な長さの違いにハッとしたり。見る度に新鮮な発見があるのだ。
いくら頑張ってもフィギュア・スケーターが『白鳥の湖』全幕をすべるのは無理。そう考えると、熊川哲也版に浸って、心の中でダンサーたちと一緒に踊ることほど贅沢な時間はないだろう!
佐藤友紀(ジャーナリスト)