2018.01.23 UP
280年の歴史を誇るワガノワ･バレエ･アカデミーを訪問！
バレエというとロシアを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか？
バレエの起源はイタリア、その後バレエの基礎が築かれたのはフランスですが、ロシアで大きく発展しました。バレエはイタリアで生まれ、フランスで育ち、ロシアで成人したと表現されますが、言い得て妙ですね。
今も多くのバレエファンを魅了するチャイコフスキー三大バレエ『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』を生んだロシア。そんなロシアのバレエダンサーは独特の華やかさと繊細な腕の動きを持っていると評されますが、その秘密はワガノワ･メソッドという教育法。その教授法を確立したアグリッピーナ･ワガノワの名前が冠された正真正銘のワガノワ･メソッドの聖地こそが1738年創立のワガノワ･バレエ･アカデミーです。ニジンスキー、ヌレエフ、バリシニコフ、ルジマートフ、ザハロワ…。その指導の素晴らしさは伝説のダンサーが並ぶ卒業生の名前を見るだけでも明らかです。
アカデミーを訪問したのは12月。クリスマスが近づき、サンクトペテルブルグの街がより美しく輝くなか、ロッシ大通りに面する世界中のバレエ少女が憧れるこの学校は、一層神秘的な雰囲気をまとっていました。
競争率65倍を超える入学試験
アカデミーではロシア全土から集まる9歳から19歳までの生徒、300名以上が学んでいます。65倍を超えるといわれる入学試験は、世界のバレエ学校で最も厳格であると言っても過言ではありません。「バレエに適した体型であるか」が何よりも優先して判断され、ときには身長や体型を見極めるために祖父母まで面接に呼ばれるといいます。
今をときめくダンサー ディアナ･ヴィシニョーワら多くのスターを指導した名匠リュドミラ･コワリョーワ先生はこう語ります。「世界中のどの舞台をみても、ワガノワで育った生徒は一目でわかります。ワガノワのスタイルはそれだけ確立しており、そのスタイルを習得するためには完璧な身体条件が要求されるのです」
低学年の生徒にこそ最も厳しい要求を
さらに求められるのは、体型だけではないようです。この日見学したクラスはコワリョーワ先生が受け持つ最高学年のクラス。まず驚いたのが、少女たちの眼差し。いずれも抜群の体型を持つ8頭身の少女がレッスンバーを握るその目には、今日が一世一代の試験なのかと見紛うほどの緊張感が。しかし、それもクラス開始後ほんの数分で納得。
「同じ間違いをしたら次は退場！」「正しく使えない脚なら私の前に見せないで！」
しまいには「見る価値がないので私は腹筋をします！」と御年77歳のコワリョーワ先生はおもむろに床で腹筋運動を…！
それも日常風景なのか、少女たちは戸惑うことなく必死にクラスを続けます。次は１ミリでも足を高く、そして正しく上げられるように…。
先生の厳しい言葉や態度は、ロシア･バレエが求める高い水準のダンサーを育てるため、プロとして通用するレベルを要求するがゆえだと彼女たちが一番理解しているのです。この精神力こそが身体条件同様に必要とされていることでした。
「低学年ではさらに厳しい指導をします。バレエは大変厳しい道だということを早い段階で分からせて、それについていけるか、ついていきたいのかを見極めるのです。バレエの道は犠牲も多いですから適性を判断することは本人にとっても大事なことです」とコワリョーワ先生。
クラスに続いて行われたのは「オーチャード･バレエ･ガラ」で上演される『人形の精』のリハーサル。2人の男性演じる道化と愛らしい人形役のバレリーナが、華やかな技術を繰り広げる作品ですがコワリョーワ先生が重点的に指導していたのは、いかにマイムを自然に演じるか。花を受け取る瞬間や道化とのやりとりを細かく指導、何度も何度も繰り返し練習させます。「このようなニュアンスは、私も自分の師から学びました。継承することで作品を守ることができるのです」という言葉に280年の歴史を誇るワガノワの伝統が受け継がれる瞬間を垣間見ました。
19万人のフォロワーを持つワガノワの注目株 マリア･コーレワ
めったに褒めることのないコワリョーワ先生が「彼女は素晴らしい」と絶賛するのがマリア･コーレワ(Maria Khoreva)。Instagramでも美しいバレエ写真や練習風景をアップし、19万人以上のフォロワーをもつ世界中のバレエファン注目の存在です。
毎年恒例のマリインスキー劇場で行われるアカデミー公演『くるみ割り人形』で、初日の主役マーシャを演じた生徒は、将来のスター候補として大きな注目を集めますが、2017年の公演ではこのコーレワが初日の主役に抜擢されました。
「オーチャード･バレエ･ガラ」では、この将来のロシア･バレエのスター候補にぜひご注目ください。
門外不出のワガノワ･バレエ･アカデミーの精鋭たちを日本で見られる「オーチャード･バレエ･ガラ」は2月開催。ぜひ、お見逃しなく！