「音の洪水」というサブタイトルは面白い。 確かに、今回集められた作品は音が溢れている。 それだけでなく、音の背後に作曲家の意欲が感じられ、ピアノという楽器にしか表現出来ない濃厚な世界を作り出している。 ショパンの「練習曲集(エチュード)」、そしてシューマンの「パガニーニの奇想曲による練習曲」はいずれも練習曲と名が付いているのに、芸術的な完成度の高い作品だ。 しかもシューマンの作品はパガニーニの有名なヴァイオリン曲からの編曲。 パガニーニも相当に「音の洪水」だったのだね。 ラフマニノフは小山さんの十八番と言って良い作曲家。 これまでソナタ第2番なども演奏されたが、第12 回というシリーズの折り返し点でまとめて演奏されるラフマニノフは、このシリーズのハイライトになりそうな予感がする。 ワイン色の世界。しかし、土地によって、ブドウによってワインの色は千差万別。 この作品にはどのワインが合うだろう? なんて考えを巡らしながら、演奏会を待つことにしよう。
片桐卓也(音楽ジャーナリスト)