| 『オードリーというスタイル』 |
| 中根: |
バレエを基本にした立ち居振る舞いを学ぶということも大事だと思いますが、やっぱりそれを常に意識して、自分の身体に反映させるっていうことが必要なんでしょうね。それって、言うのは簡単だけれど実行するのは大変ですよね。 |
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| マダム: |
そうですね。今の若い方たちって足が少し内股気味で背中が丸まっている人が多いですよね。日本人はもともと着物の文化ですから、和服を着こなすという遺伝子がそうさせている部分もあるのかもしれません。けれども、現代は西洋の文化である洋服を着るという習慣が定着しているわけですから、洋服の歴史を勉強したり、それこそオードリーの着こなしをお手本にしたりしていただければいいと思います。そうすれば、もっと自分の美の感性が豊かになりますし、洋服を着るのも楽しくなると思いますよ。トータルのコーディネイト、美意識というのはすごく大事だと思うんですよね。わざとらしくなく、自然にそれができるっていうのが究極の美じゃないかなと。オードリーというのは、日常生活でもそんな美を保っていた代表的な女性だと思うんですよね。ファッションセンスやスタイルが取り上げられることが多いですが、私にとっては、自分の身体をよく知っていて、日常生活でも自分らしさを保ちつづける努力を怠らなかった女性、なんです。 |
| 海老沢: |
私たちが見ると本当にこれだけ美しくて、コンプレックスなんかないような感じを受けますけれど、オードリーについて書かれた本を読むと、実はコンプレックスの塊で、自分の目も嫌だし鼻も嫌だった、というようなことが書いてありますよね。 |
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| マダム: |
そうですね。だからそういう自分の嫌なところも受け入れて、許して、さらにいいところを際立たせる努力をしたということだと思うんですね。私は、そういう努力をするためには、まず自分を大切にするということが原点になければならないと思うんです。彼女は幼い頃に父親に捨てられてしまいますが、それは父親に認められなかったということでもあると思うんですね。だから、彼女は自分が自分を好きになって自分のいいところも悪いところも認めてあげなきゃ、って思ったんじゃないかしら。また、表現方法としてバレエを選んだというのも、父親に言いたくても言えなかったことを何とか身体を通して表現したかったのかもしれない、と考えると納得がいくような気がするんです。
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| 海老沢: |
その上で、ファッションにおいても自分のスタイルをつくっていくことができたのですね。 |
| マダム: |
例えば、映画『パリの恋人』で着ていたオーガンジーの服が展示されていましたが、プライベートな写真の中で着ていた洋服とモチーフが同じだったんですよね。あと、メル・ファーラーとの結婚式で使用されたウェディングガウンは襟が寝ている状態で展示されていました。でも結婚式の写真では立っている。これに関しては実は違うかもしれませんが、私は、もともと寝ている襟を、オードリーが自分の美しいあごから首の部分を引き立てるためにあえてそういう風に着こなしたんだと理解して感激したんです。 |
| 高山: |
なるほど、それは気づきませんでした(笑)。本当にそうかもしれませんね。やっぱりオードリーはプライベートでもパブリックな場面でも、自分のスタイルが一貫しているんですね。
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| 鷲尾: |
自分を表現する時に、何でもかんでもやりたいことをすれば、オードリーのように自分らしいスタイルが確立されるわけでもない。むしろ逆に、彼女は外見も内面も自分を律する部分が多かった人なんだろうと思います。 |
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| マダム: |
そうでしょうね。私は昔、バレエの先生から言われたことですごく印象に残っている言葉があるんです。それは“自分自身を躾ける気持ちを大事にしなさい”、ということなんですね。着物を作る時も布がずれないように仕付け糸というのを縫い付けますよね。いろんなことがあって少しずれてしまっても、自分のスタイルに戻ってこられるための支えとなるのが、着物における“仕付け糸”であり、人間における“躾”だと思うんです。
私は今9歳の娘がいるんですが、親として子供を躾けるというだけじゃなくて、自分自身を躾ける気持ちというのを持ち続けていきたいな、と思うんですね。そういう気持ちを持続することが、その人の身体のラインの美しさだけじゃなくて、人間としての魅力やその人らしい生き方を維持することにつながるんじゃないでしょうか。きっとオードリーも自分に対して同じような気持ちを抱いていた女性じゃないかな、と思います。
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