ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまでベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで

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著名人のみなさまに、お気に入りの作品を教えていただきました!
あなたの好きな作品はどの作品ですか?展示室でお気に入りを見つけてください。

Vol.1

コスモプラネタリウム渋谷 解説員
永田美絵さんより

ルドルフ2世や天文学者ケプラーが活躍した時代、宇宙は天空に古来の人が描いた星座の世界でした。しかし天球儀は夜空を動く太陽の通り道や天の赤道など当時の人々が未知なる宇宙を知る初めての道具。やがて望遠鏡が登場し、天文学が大きく移り変わる時代の香りのする素敵な展示です。

Vol.2

現代美術家
フィリップ・ハースさんより

様々なものを組み合わせて作り上げられた肖像画を最初に描いたのはアルチンボルドではありません――ギリシャ・ローマ時代からその種の肖像画は存在していました――が、彼はそれを、当時から現代までのどの追随者も適わないほどのレベルにまで高めたのです。豊かさや機知、気取った雰囲気において並ぶもののない、アルチンボルドの作品の中でもとりわけ壮麗な《ウェルトゥムヌス》。この絵画は、彼の偉大なパトロンであるルドルフ2世の肖像画としてぴったりの作品です。

Vol.3

英国園芸研究家、ガーデン&プロダクトデザイナー
吉谷桂子さんより

昔ロンドンの本屋で、サーフェリーの「動物に音楽を奏でるオルフェウス」の絵葉書を見つけ、キャラクターグッズを集めるみたいに買った。だって、好きなもの(すなわち、動植物たち。flora and fauna)があふれるほどに描かれていたから。でも、実物は未体験。それが今、日本に来てる!イタリア風の「庭」に「動物びっしり」。植物の質感必見。動物それぞれの表情必見。特に可愛い目をしたライオンとは、どうぞ見つめ合って。すっごくハッピーになります!

Vol.4

美術史家・東海大学文学部ヨーロッパ文明学科教授
金沢百枝さんより

ルドルフ二世といえば、まず『驚異の部屋』が思い浮かびます。美しく珍しい自然物、工芸品、美術を蒐集・展示する。つまり、この世界を支配しているというアピールなのでしょうが、皇帝が、宮廷のあるプラハに、ドードーまで連れてきていたとは驚きました。警戒心が薄く、飛べないドードー、絶滅寸前の鳥を見てどう思ったのか、展示中の本の一頁を見ながら思いを馳せました。

Vol.5

美術史家・明治大学名誉教授
森 洋子さんより

画家はこの作品以前に、ミラノのF・ボッロメーオ枢機卿の注文で、豪華な花束の絵を制作しました。その時、彼に与えられた助言は、「神の偉大なる御業を芸術の力で視覚化されれば、キリスト教徒は神への崇拝をより深めるであろう」というものでした。今から20年前、この作品はウィーンの「ブリューゲル兄弟展」でポスターに使われましたが、世界中のヤン・ブリューゲルフアンは前作よりもはるかに強い美的、宗教的な力に魅了され、会場へと誘(いざな)われました。わたしにとっても、今回、ブリューゲル一族のトップ・スターであるヤンの代表作に東京で再会できたのは「驚異の喜び」です。

Vol.6

占星術研究家・翻訳家
鏡リュウジさんより

アピアヌスの天文教科書
天と地、そのすべてを収集しようとした稀代の皇帝ルドルフ二世。が、このルドルフも突然変異ではなく、やはり時代の子だったといえる。大航海により世界が近くなり、望遠鏡により星の世界にもまた手が届くと考えられるようになった。人々が世界の驚異に胸をときめかせ、さらにそれを手にすることができるのではないかと興奮していたのだ。ルドルフはこの時代精神そのものの結晶だったのだ。
そしてこの美しい天球図版は、宇宙そのものの運行を我が手に収めることができるのではないかという、この時代精神の精華でもある。

ペーテル・グルンデル《卓上天文時計》1576-1600年、真鍮、鋼、スコークロステル城、スウェーデン Skokloster Castle, Sweden