マリメッコ展

Column 学芸員によるコラム

独創的かつ自由であれ!マリメッコを創り上げた女性たちの物語

 1951年にフィンランドで創業されたデザインハウス、マリメッコ。ファブリックのデザイン・製作をベースとしながら、生活雑貨まで幅広い製品を展開しており、日本でも絶大な人気を誇っている。その魅力は、「それってマリメッコ?」と指摘できるような共通の雰囲気、すなわちデザインの大胆さと色彩の鮮やかさ、そして何よりも多種多様な個性や独創性を積極的に認める自由さにある。
 この特徴はマリメッコの創業者であり、生涯CEOであり続けたアルミ・ラティア(1912-79年)の精神そのものである。アルミは1970年のフィンランド国内向けのプレスリリースで次のように述べている―「マリメッコが積極的に取り組んでいるのは、販売用ファブリックというよりむしろ、テキスタイルのコンセプトそのもの。(中略)マリメッコが売っているのは、結局はコンセプトに違いないのです。多かれ少なかれ、私たちが採用する色やデザインは、個性というものなくしては絶対に成立し得ない。これもマリメッコ特有で、ある種聖域に属するような類のことなのです」(本展図録、p.22より)。
 特にマイヤ・イソラ(1927-2001年)は、その精神を体現する代表的なデザイナーの一人である。マイヤは学生時代にアルミにその才能を見出され、生涯に渡ってマリメッコにデザインを提供。自由な制作環境を好んだマイヤは、1961年以降はフリーランスのデザイナーとなったものの、最も有名な《ウニッコ》(「ケシの花」の意、fig.1)を始めとして、《キヴェット》、《ロッキ》、《カイヴォ》など、500点を超える独創的なデザインをマリメッコのために生み出した。その作品はマリメッコのアイデンティティを形成する定番デザインとして、今でも製品のヴァリエーションを増やし続けている。
 個性を尊んだカリスマ的経営者アルミと、自由に創造することを何よりも望んだデザイナーのマイヤ。二人の女性の出会いが、今日我々が「マリメッコ的」と感じる代表的なイメージの一つを生みだした。今も衰えることを知らないマリメッコの絶大なる人気は、アルミから引き継がれた経営理念に基づく精神と、それを実際のファブリックに具現化してきたマイヤを始めとするデザイナーたちの豊かな創造の歴史によるものなのである。本展は会場に所狭しと並べられた200点以上の作品を通じて、アルミが何よりも届けたかった「コンセプト」を存分に享受できるまたとない機会となることだろう。

Bunkamura ザ ・ ミュージアム 学芸員 三谷知子

ファブリック《ウニッコ》(ケシの花)、図案デザイン:マイヤ・イソラ、1964年
Unikko pattern designed for Marimekko by Maija Isola in 1964