2015.03.19 UP

稽古場レポート到着!!

3月某日、熱い稽古が行われているという『禁断の裸体』の現場に侵入した。“禁断”に“裸体”……「掛け合わせるとこうも効果を発揮するか!?」という心ざわつくタイトル、演出は赤裸々な性描写などセンセーショナルな作品をつくり続けて来た三浦大輔、まぶしい肉体を惜しげもなくさらす俳優のチラシなど、いかがわしい好奇心もかき立てる公演の稽古場に足を踏み入れる。すぐ目に入ったのは、二階建ての大きなセット。両側には大階段が据えられており、シアターコクーンの奥行きあるステージ全体を、高さも利用しつつダイナミックに演出するようだ。

            

妻を亡くした男やもめエルクラーノ(内野聖陽)と娼婦ジェニー(寺島しのぶ)、兄に恨みを抱く弟パトリーシオ(池内博之)、禁欲的な生活をエルクラーノに強いようとする息子セルジーニョ(野村周平)と3人のおばたち(木野花、池谷のぶえ、宍戸美和公)の激しいぶつかり合いを軸に、畳み掛ける予測不能の展開が巻き起こる。ブラジルの人気作家ネルソン・ロドリゲスの作品が観られる、貴重な機会でもある。
 「はじめましょう」という三浦の指示によって静かに稽古が始まり、セルジーニョが父への苛立ちをぶつける場面がスタート。亡き母のためにも、二度と女性と関係を持つべきではないとかたくなに叫ぶセルジーニョ、セックスは美しいと説く父。視線の置き場所、声のボリューム、ぎこちなさをかもす距離感、せりふの温度など、繰り返し繰り返し、繊細な三浦の演出が施される。少年のかたくなさを狂気を帯びながら演じる野村、息子への愛情と自分の欲望に引き裂かれる父を細やかに演じる内野。場面の長さとしては短い時間だが、多くの感情が渦を巻く場面になりそう。

 

続いて、セックスにあけすけなジェニーと、それに面食らうエルクラーノのシーン。「あんた、また、あたしとやりたいんじゃない?」と、けだるい声に艶が透ける娼婦を寺島が存在感たっぷりに演じる。それに対する内野のエルクラーノは、「俺はもう一生セックスはしないんだ。そういう話はするな!」と動揺したり、怒ったりと、刻々と変化する気持ちの変化をチャーミングに表現してみせた。そんな二人の関係をかき混ぜる弟パトリーシオを演じる池内の影には、色気がある。
 激しいセックスシーン、救いようのない物語、ラテンな感情の起伏が混ざり合って熱を帯びる。笑っちゃうほど欲望に正直で、必死に生きる彼らの姿は、ズームで見れば狂おしく、俯瞰で見れば愚かしい。そして愛すべき“人間”ばかりだ。
 覚悟していた“激しさ”は期待通り。と同時に、現代日本の私たちにとっても「あるある」の感情があちこちに転がる、想像外の稽古場だった。エロスも漂い、ヒネりの効いた笑いもある、新感触の大人のエンタメが立ち上がりそうだ。(文/川添史子)

 

 

photo: t.minamoto