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シェイクスピア的ラブストーリーに対して岩松了が問う、現代人のための恋愛物語

Bunkamura25周年記念 ジュリエット通り

2014年10月8日(水)~31日(金) Bunkamuraシアターコクーン

トピックス

「ジュリエット通り」製作発表 会見レポート

『シブヤから遠く離れて』(2004)、『恋する妊婦』(08)、『シダの群れ』シリーズ(10、12、13)に続く、シアターコクーンプロデュース公演6作目の書き下ろしとなる、岩松了の新作『ジュリエット通り』製作会見が8月中旬に開催され、岩松とメインキャストが顔をそろえた。

 

 『シダの群れ』シリーズで、ヤクザという男の世界をたっぷりと魅せてきた岩松が、「今度は女の世界を描いてみたいと思った」と語るように、今回舞台となるのは現代の娼館。

 住宅街にひっそりとたたずむ、高級娼館「枯淡館」。娼館と住宅街の間の通りは、かつて通りを挟んで恋する男の元へ通う若い娼婦がいたことから「ジュリエット通り」と呼ばれていた。通りを挟んだ枯淡館の向かいには、暇に任せて枯淡館に出入りする資産家・田崎昭一郎(風間杜夫)の別宅があり、昭一郎と後妻のスズ(高岡早紀)、享楽的な父に嫌悪感を抱く前妻との息子・太一(安田章大)が暮らしていた。そんな家庭の中に昭一郎が若い娼婦スイレン(大政絢)を招き入れたことから、それぞれの関係は揺らぎ始める……。

 

 「娼館」という非日常な空間と、現実的な社会を体現する「家庭」。「この相対する世界が絡み合うことで生まれる関係、それを探っていけば、何か掘り当てられるんじゃないか」と、今回の作品設定のきっかけを岩松は語る。「僕ら人間には、“こだわる”ことと“どうでもいい”ことが共存している。この“どうでもいい”が蔓延しているのが娼館なのではないか。かたや家庭は“どうでもよくない”世界。それを照らし合わせるということを、今回の構造の中でやってみたいんです」。

 

 主演舞台が3年ぶりとなる安田は、「久しぶりの舞台、初めて経験する岩松さんの演出、どんなふうにしごかれるのかとにかく楽しみです。娼館と家庭という交わることのない二つが混ざり合うことで生まれる葛藤をリアルに表現していきたい。新しい自分を発見するチャンスをもらえたと思っています。岩松さん、好きにやっちゃってください!」と発言すると、岩松作品常連の風間は「(岩松さんの稽古では)千本ノックというのがあるんです。とにかくもう一回、もう一回って同じシーンを繰り返すんですよ。これにめげないように!」とアドバイス。

 本格舞台初出演で娼婦という難しい役どころに挑む大政は「岩松さんにたくさんダメ出しをいただいて、成長できるようにがんばっていきたい」。娼館の女将を演じる渡辺真起子は、「(安田と大政という)お二人のキラキラに負けないように舞台に立っていられたら」、娼婦ボタン役の烏丸せつこは「岩松さんの演出は粘っこいとお聞きしておりますが(笑)、思いっ切り粘ってください、よろしくお願いします!」と、それぞれの言葉で作品への期待を語った。

 

 岩松はまた、「ちょっと頽廃的なものをやってみたいという意識が強くあった」とも語る。「世界全体がいま、“頽廃的=どうでもいい”という雰囲気に向かっている気がしてならないんです。僕自身がいま生きている社会に感じている“何か”を、この作品を通して探っていきたい」。

 現代社会の流れを鋭く見つめる岩松了が描く、現代人のための恋愛物語。どのようなストーリーが紡ぎ出されるのか、目撃しない手はない。