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岩松了が描く任侠劇シリーズ!「シダの群れ3 港の女歌手編」この秋公開!!

シダの群れ 第三弾 港の女歌手編

2013年11月6日(水)~30日(土)

Bunkamuraシアターコクーン

インタビュー

繊細な心理描写を重ねつつ、任侠の世界に渦巻く欲望、愛憎を鮮やかに切り取る、岩松了作・演出の『シダの群れ』シリーズ。その第3弾が描くのは、女の夢を弄ぶ男たちの顛末だ。殺伐とした現実の中で語られる「夢」にどんな意味があるというのだろう。ヤクザな生き方、その葛藤と波乱のドラマを綴る岩松の筆は、1作目の主人公・森本の再登場と共に、いっそう鋭さを増していく――。

『シダの群れ』なら、シェイクスピアのデタラメさにも追いつけるかもしれない

岩松了

撮影=小林由恵(TENT)

 このシリーズはもともと、阿部サダヲくん演じるチンピラが親分になるまでの物語として構想していたんですよね。つまり『ゴッド・ファーザー』の主人公・マイケルがドンになっていく、その演劇版を作りたいと思っていたんです。彼らはいったい、どんな思想を持って親分になっていくのか。それを紐解くことで、僕自身がヤクザの世界をどう見たかが分かる、そういうシリーズにしたいなと考えていました。
 劇作家としての自分の生理にとっても、今、この世界を描くことは大事なんじゃないかなと思ったんです。振り返れば「日常生活を描く作家」という体裁の中で、その裏にあるジュクジュクした心理を描き続けてきた自分がいる。でもヤクザって、もっとストレートで、問題を隠蔽しないでしょう。彼らのような、感情の波動の大きい人々を描くことで、欠落や飛躍をもよしとするような「めざましさ」を、自分の劇作に取り込むことはできないだろうか。そんな算段も、この『シダの群れ』を始める時にはありました。たとえばシェイクスピアの芝居なんかも結構デタラメなところがありますよね。「これは俺には追いつけない」って思う反面、やっぱり憧れもあって。だから『シダ〜』を書くことは、僕が書くような日常生活における人の感情と、シェイクスピア劇のようなダイナミックなドラマツルギーはどう繫がるのかという、兼ねてからの疑問への答えを探す作業でもあるんです。
 第一弾では仲間の粛正、第二弾では師弟関係の中に生まれる殺意を描きましたが、今回は、男っぽいこの世界に女性を入れたいというところから物語の枠組みを考えました。夢を持った女歌手を弄ぶ男たち。その世界を主人公の森本はどう見るのか。いってみれば、影も形もない理想や虚構を、ヤクザの現実の中に放り込んでみたかった。森本は第一話では下っ端で、「俺はヤクザにはなれない」っていうような、いわば客観的なキャラクターでした。でも今回は、小泉今日子さん演じる歌手との出会いを通じ、より積極的に抗争に参加することになります。そうやって徐々に周辺から中心に近づいていく。その過程で、彼は自分と周囲との違いを知り、自分なりのヤクザになっていくわけです。港町、女歌手、と設定は類型的ですが、繰り返し使われ、語られるものには本質があると思うし、こういう枠がないと、僕が描くジュクジュクには収集がつきません(笑)。結局、起伏の大きなドラマを目指すとはいっても、完全に自分の生理から離れることはできないんですよね。どうしても緻密に緻密に、感情を追ってしまうんだけど、その緻密さも、誰かの思いがけない欲望や行動によって、どんどん意味合いを変えていく。そんなドラマにできればいいなと思っています。

取材・文=鈴木理映子